アニメとかビジネスの話

趣味でアニメビジネス研究をしている人の雑記帳です

僕は「アニメ」の検索結果に怒っている

アニメ
アニメーション(animation)の略。ただし英語圏でanimeという場合は、日本製のアニメーションを意味し、他のアニメーションをanimeとは呼ばない。
-美術用語辞典より抜粋-

 

あなたは「アニメ」というキーワードで検索したことはあるだろうか。

アニメ好きならあまりにも日常的に使う言葉なので、改めて検索する機会は殆ど無いだろうと思う。
今更意味を確認するようなものでもないし、アニメを包括的に網羅したポータルサイトがあるわけでもない。だから、アニメ好きはわざわざアニメというキーワードを検索したりしない。

 

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彼らが普段検索ワードに頻繁に打込むキーワードは、作品のタイトルやキャラクターの名前がほとんどだろう。私も、先日まで「アニメ」というキーワードで検索したことがなかった。

 

だが、ある日ふと思い立って、「アニメ」でキーワード検索してみた。あまりにも当たり前のワードだったから、逆にどんなサイトが表示されるのか気になったのだ。

どんなものがトップに表示されるのだろう。今一番人気のアニメ作品のサイトだろうか。それともアニメを制作している会社の企業サイトだろうか。それとも、無難にwikipediaのアニメのページだろうか。

 

だが、結果は、予想もしていないものだった。

 

僕は今、「アニメ」の検索結果に怒っている。

 

 

 

 

「アニメ」で検索するとどんな結果が表示されるのかは、ためしてみるのが一番手っ取り早いだろう。

「アニメ」で検索すると、こうなる。

www.google.co.jp

 

最も上位に表示されるのが、YouTubeアニメ無料動画+という違法アップロードされた動画へのリンクを集めているポータルサイトだ。
そして、二番目に表示されているのは何かというと、アニポという、こちらも違法アップロード動画へのポータルサイトである。

 

はっきり言って、この状況はおかしい。
アニメは日本でもかなりメジャーなエンターテイメントとして一定の地位を獲得しているのは言うまでもないことだ。言葉としての知名度は抜群に高いし、趣味としてもかつてより理解が進み、多くの世代で楽しまれている日本が誇る財産である。

そんなアニメのことを調べようと検索すると、違法アップロードされた動画のポータルサイトが1位2位に表示される。

 

ということはつまり、それだけ多くの人間が違法アップロードを利用している、もしくはこれから利用する可能性があるということである。特に、検索順位2位のアニポというサイトは、掲示板機能やレビュー機能なども搭載されており、たくさんのユーザーを抱え込んでいることが見て取れる。とても由々しき事態だと思う。

 

海賊版の是非について

かつて、海賊版の存在はある意味黙認されていたようなところがあった。昔は今よりもサーバーの維持費が大きかったし、インターネット配信の権利に関する経験値が少なく、ネット配信で十分に収益を上げるシステムも無かったので、そういったコストを掛けずに無料で宣伝をしてくれる違法アップロードは、積極的に摘発しない方向性だったのだ。


しかし、時代が進むに連れてサーバ維持費は急激に安くなり、インターネット配信を手掛ける事業者も多くなってきた。そして同時に配信でも様々なモデルで収益を上げることが可能になってきている。つまり、海賊版を野放しにしておく理由はなくなっているのだ。

 

海賊版の副作用
また、海賊版は恐ろしい副作用を持っている。海賊版に慣れ親しみ無料で視聴していた人間は、作品にお金を支払うという意識が身につかないのだ。こうした意識を持っている彼らは、正規の価格で提供されている作品を前にしても、そもそも作品を見るためにお金を払うのはバカバカしいと感じ、多くの人間が正規配信で視聴することはない。こうした視聴者意識の低下は、結果として製作者の利益に多大なる影響を与えているのだ。

 

海外でも同様のことが起こっている

ある国では、これまで正規の流通網が確保されておらず、同国のアニメファンは違法アップロードされた海賊版を見るほかなかった。そんななか、ようやく正規の流通網が整い、有料での配信が始まったのだが、満を持しての上陸であったにもかかわらず利用者が思うように伸びなかったのだ。これはつまり、同国のアニメファンはアニメを見るにはお金を払う必要があるという意識が全く無かったため、正規の有料配信を前にしても「なぜお金を払わなければいけないのか」という心理になってしまい、加入率が思うように伸びなかったのである。

 

日本のアニメは今後世界に進出してゆくことが必要不可欠だ。日本政府としてもクールジャパン戦略として積極的に投資している。
にも関わらず、このような状況を野放しにしているのは明らかにおかしい。海賊版は多大なる損失を生み出しているにもかかわらず、それらのものに「アニメ」と検索するだけで辿りつけてしまうのだ。一概に言えたことではないけれど、そりゃあクールジャパンの効果が思うように出ていないことにも少なからず影響しているのでは、と思ってしまう。一刻もはやくこうした状況が改善されることを期待したい。そのために、取り組まなければならないことは山ほどあるはずだ。

 

なぜ、作品に対価を払わなければいけないのか

確かに、海賊版だったとしても日本のアニメを面白いと言って見てくれるのはありがたい。だが、創り手だって生きているのだ。作品を作って、それでお金をもらって生活しているのである。視聴者の面白かったという感想ではお腹いっぱいにならないし、誰かを養うことも出来ない。決して道楽でやっているわけではなく、作り手にとっては間違いなく生きるための手段であり、れっきとしたビジネスなのである。ビジネスである以上、価値のあるモノには正当な対価が支払われるべきだし、対価なしには価値あるものは手に入れられないのが、本来の姿なのではないだろうか。

 

これは、消費者の意識の問題ではない。消費者にお金を払わないのが当たり前だと思われないような環境を作ることは、アニメを売る側の使命である。

 

 

 

  

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